【阅读理解】  部下に対して、ほめた方がいいのか、叱った方いいのか、心理学的に言ってどちらが効果的か、などと質問されることがある。部下の扱い方というのはなかなか難しいもので、心理学の知恵によって、よい方法を知りたいと思われるのであろう。ほめるとつけあがる、叱るとシュンとして何もしなくなる、一体どうしらたいいのか、などと言われる人もいる。　心理学者で、①このような疑問を解くために実験をした人がいる。グループを三つに分けて、どれにも同じような単純な仕事を与え、終わった後で第１のグループは結果のいかんにかかわらず、よくできたとほめる。第２のグループは全員に対して、もっとできるはずだと思っていたのにと叱る。第３のグループ、ほめも叱りもしない。そうして翌日はまた似たような課題を与え、前日よりどの程度進歩したかを見る。そうすると、二日目は叱ったグループが一番よく進歩し、次はほめたグループ、何も言わなかったグループ、ということになる。　ところが②面白いことに、これを続けてゆくと、ほめるグループは進歩の上昇率が高く、叱るグループを抜いてしまうのである。人間は叱られると、一度は頑張るが、あまり続くと――それでも上昇するのだが――上昇率はそれほどでもなくなる。何も言われないグループは前二者に比べると上昇率は一番よくない。つまり、何も言わないのに比べると、叱ってばかりいる方がまだましだ、というわけである。　この実験結果から、（　③　）と良いと結論するのは、少し性急すぎるようである。この実験は単純な課題に対して行ったので、課題の種類によっては結論が異なるかもしれない。それに、この実験には、（　④　）、というグループは含まれていない。おそらく、正解は「適切にほめ、適切に叱る」のが一番良いということになろうが、この適切にというところが、実際にどうするのか誰しもわからないのが困るということである。